研究会設立趣旨

以下は2008年秋に(社)応用物理学会理事会に提出した研究会設立申請書の内容です。

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1.研究会名称  埋もれた界面のX線・中性子解析研究会

2.代表者(連絡担当者)  桜井 健次
〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
(独)物質・材料研究機構 量子ビームセンター 放射光解析グループ
Phone : 029-859-2821 Fax : 029-859-2801
電子メール sakurai@yuhgiri.nims.go.jp
sakurai@pas.tsukuba.ac.jp

3.設立趣旨

ナノサイエンス・ナノテクノロジーの研究開発においては、何がしかの物質によって覆われた「埋もれた」ナノ構造を扱う必要がある。また人工的に形成された積層構造の各層や各界面は、常に上層に「埋もれた」状態にある。通常の顕微鏡的な方法による直接観察ができないため、試料を破壊せずに解析・評価することのできる手段として、X線および中性子による解析技術を活用することが有力である。特に反射率法は、深さ方向の内部構造、具体的には各層の膜厚、密度、また各界面のラフネスを非破壊的に求めることができ、また半導体・電子材料からソフトマテリアルまで、広範な材料に適用できる点で優れている。最近では、高輝度シンクロトロン放射光源等の先端研究施設を用い、微小領域分析、quick 計測等にも道が開かれつつあり、加えて埋もれた界面に敏感な回折・散乱および分光等の関連技術を総動員し、ナノサイエンス・テクノロジーの種々の未解決問題への取り組みが本格化しつつある。また、限られた範囲で実現しつつある超短パルスX線源や高コヒレーンスのX線源の利用にも大いに関心が集まっている。さらに2008年に中性子発生に成功した 大強度パルス中性子源J-PARCを活用し、またX線・放射光との相補利用により、これまでは困難とされてきた一層高度な解析をめざそうという機運が高まっている。

X線・中性子の高度利用と埋もれた界面の新解析技術の開発が急速に進みつつある状況から見て、今後、諸外国においても、それらを発展させ、また駆使することにより、実際のナノサイエンス・ナノテクノロジーの課題の解決に活用する研究活動は相当に活発になると予想される。そこで、半導体・電子材料からソフトマテリアル、バイオシステムまで、種々の物質系における埋もれた界面を高度なX線・中性子解析により解明する研究分野の開拓、発展を主な目的として研究会の設立を提案する。本研究会は、2005年11月に発足した新領域グループの活動の成果を継承するものであるが、J-PARC が利用可能になった新しい情勢を念頭に、これまで以上に中性子の積極利用および、X線・放射光と中性子の相補利用に取り組むとともに、理論研究者との交流を活発に推進する。既に特色となっている参加者の裾野の広さ、活動分野のバラエティの豊かさをこれまで以上に生かし、門戸を広く開き、広範な物質系の埋もれた界面の未解決問題に関心を持つ人々の参加を募りたい。必ずしもX線・中性子を専門としない研究者をも迎え入れ、この研究会がなければあり得ないであろうインタラクションを目的意識的に組織し、新研究分野の開拓、発展に取り組む。

4.新領域グループにおける活動(2006年~2008年)

(1)定例会合等の開催
2006年1月8日 第1回グループ会合 名古屋大学 (参加者数 15名)
2006年3月22日 第2回グループ会合 武蔵工業大学 (参加者数 9名)
2006年5月19日 X線・中性子解析による「埋もれた」界面の科学に関する企画調査会合 物質・材料
研究機構千現地区 (参加者数 19名)
2006年8月28日 X線・中性子解析による「埋もれた」界面の科学に関する企画調査会合 立命館大学
びわこ草津キャンパス (参加者数 21名)
2006年8月29日 第3回グループ会合 立命館大学びわこ草津キャンパス (参加者数 17名)
2007年3月28日 第1回グループ会合 青山学院大学 (参加者数 13名)
2007年3月28日 教科書出版に関する第1回打ち合わせ会合 相模原第一ホテル(参加者数 13名)
2007年9月3日 教科書出版に関する第2回打ち合わせ会合 ホテルサンルート札幌(参加者数 9名)
2007年9月4日 第2回グループ会合 北海道工業大学 (参加者数 14名)
2007年12月9日 第3回グループ会合 日本大学駿河台キャンパス(参加者数 17名)
2008年1月13日 第1回グループ会合 立命館大学びわこ草津キャンパス(参加者数 9名)
2008年3月27日 第2回グループ会合 物質・材料研究機構東京会議室(参加者数 9名)
2008年8月26日 教科書出版に関する打ち合わせ第3回会合 グランキューブ大阪(参加者数 7名)
2008年9月2日 第3回グループ会合 中部大学キャンパス
2008年11月30日(予定) 第4回グループ会合 名古屋大学

(2) 研究ワークショップ開催
a. 2006年7月3日~4日
埋もれた界面のX線・中性子解析に関するワークショップ2006
マルコー・イン新横浜 (参加者数 43名)
b.2006年8月29日
X線・中性子による quick 反射率法の展望 - 表面や埋もれたナノ構造の変化を追う(II)立命館大学 (参加
者数 70名)
2006 秋の応用物理のシンポジウムの1つとして実施した。
c.2006年12月9日~10日
第17回日本MRS 学術シンポジウム セッションG「量子ビームによる埋もれた界面の解析 -半導体・電子
材料からソフトマテリアルまで」
日本大学 (参加者数 40名)
d. 2007年7月22日~24日
埋もれた界面のX線・中性子解析に関するワークショップ2007
東北大学金属材料研究所 (参加者数 64名)
東北大学金属材料研究所共同研究および応用物理学会研究活性化支援金により実施された。
e.2007年9 月4日
X線・中性子による quick 反射率法の展望 - 表面や埋もれたナノ構造の変化を追う(III)
北海道工業大学 (参加者数 50名)
2007 秋の応用物理のシンポジウムの1つとして実施した。
f.2007年12月9日
第18回日本MRS 学術シンポジウム セッションG「X線・中性子による埋もれた界面の解析 - 微小領域分
析およびquick 計測によるナノサイエンス・テクノロジーへの展開に期待する」
日本大学 (参加者数 100名)

(3) 講習会開催
a. 2007年11月29日~30日
第1回講習会「X線反射率法による薄膜・多層膜の解析」
(独)物質・材料研究機構千現地区 (参加者数 63名)
b. 2008年3月26日
第2回講習会「X線反射率法による薄膜・多層膜の解析」
(独)物質・材料研究機構千現地区 (参加者数 47名)

(4) 論文集等、出版物の発行
研究ワークショップの成果を次の冊子にて刊行した。
a. KEK Proceedings 2006-3
b. Transactions of Materials Research Society of Japan, Vol.32, No.1 (2007)
c. Journal of Physics: Conference Series Vol.83 (2007)
d. Transactions of Materials Research Society of Japan, Vol.33, No.3 (2008)
また講習会のために「X線反射率法入門」(188 ページ)を発行した。

(5) その他
科研費特定領域研究「埋もれた界面の科学」を提案。2007年6月にヒヤリングを受けたが、残念ながら、採択には至らなかった。

5.事業計画
(1) メーリングリストおよびホームページによる情報交換
(2) グループ会合開催(年3~4回)
(3) 研究ワークショップ開催(年1回程度)
(4) 講習会および中性子施設等の見学会の開催
(5) 入門書、専門書等、書籍の出版
(6) 国際標準化に関するディスカション

6.予定される参加者数  80名程度

7.存続希望期間   3年