2018年5月25日

「新版X線反射率法入門」近日刊行のお知らせ

およそ1か月後の6月29日に「新版X線反射率法入門」(講談社)が刊行される運びとなりましたので、ご案内いたします。

「X線反射率法入門」の刊行はいまから9年ほど前、2009年1月のことになります。ほぼ同じ時期、欧米では、類書が何冊か続けて出版されていました。それらは2000年前後に出された書籍の第2版にあたるものです。わが国の「X線反射率法入門」は、国際的には1周遅れのスタートになってしまった感がありますが、後発の利を生かし、基礎知識を一層わかりやすく系統的に整理した書としつつ、それでいて海外の書に含まれない独自の学術・技術内容も網羅した書とすることができました。何よりも読者が自らの試料を解析しようとする際に必ず役立つ実践の書となるように構成した点は、類書とは際立って異なる特色になっています。そうは言いながらも、実のところ、出版当時は、どれほどの方が実際に手に取って下さるか、やや心配しておりました。結果として、それは杞憂だったようで、予想以上に多くの方に読んでいただき、また講習会などの参考書としても活用して頂くことができ、本当によかったと思っています。また、韓国語に翻訳され、お隣の国でも出版して頂けることにもなりました。

初版から9年以上の月日が過ぎ去り、これからの時代のわが国の学問と産業の期待に応えられるよう、「X線反射率法入門」もまた内容を一新するべき時期がきました。いまや、多くの方が日々インターネットで情報を検索し、収集なさっているのではないかと思われます。そのような情報はもちろん便利で有用であるに違いありませんが、「新版X線反射率法入門」の執筆者たちがこの書籍の刊行を通して伝えようとする知識、技術、情報は、少なくとも現時点では、インターネットなどの検索では決して容易に得られないものであろうと信じております。

初版と新版を比較すると、およそ3割の増ページになっています。最重要の基礎知識を説明する第1、2,3章は初版を踏まえながらも1割以上増ページしての補筆、拡充を行いました。第4章「X線反射率のデータ解析の注意事項」、第5章「微小領域分析およびイメージングへの展開」、第6章「時々刻々変化する系の追跡への展開」は、初版にはなかった新しい章になります。第7章の応用事例では、電気化学界面など固液界面を新たに追加し、有機・高分子膜に関する内容を増ページしました。第8章の関連技術では、共鳴軟X線スペクトル法、X線光子相関分光法を新規に追記し、さらに第9章「中性子の利用」を新たに設けています。

初版同様、新版もなにとぞよろしくお願いいたします。

読者の皆様にとってきっと役立つ1冊になることを切望しております。