2006年12月31日

日本MRSシンポジウムのサマリ

12/9~10 に開催された日本MRS学術シンポジウムのセッションG「量子ビー
ムによる埋もれた界面の解析 -半導体・電子材料からソフトマテリアルまで」
のサマリをお届けします(これは学会事務局より、日本MRSニュースに掲載す
るから、ということで用意したものです)。

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ナノサイエンス・ナノテクノロジーの研究では、表面に露出しているものばかり
ではなく、何がしかの物質によって覆われた「埋もれた」ナノ構造を扱う必要が
ある。また人工的に形成された積層構造の各層や各界面は、常に上層に「埋もれ
た」状態にある。最近、こうした「埋もれた」界面を破壊せずに研究するために、
X線、中性子等の量子ビームによる反射率法等の解析技術を高度化しようとする
機運が高まっている。本セッションは、半導体、ソフトマテリアル、バイオシス
テム等について、物質の種別や材料としての応用の違いを超え、「埋もれた」界
面の制御、機能、反応等に関わる最先端のサイエンティフィク・トピックスを交
流し、解析技術の将来像を討論することを目的として開催された。

プログラムは招待講演(口頭講演)18件、ポスター16件の合計34件から構
成され、2日間にわたり行われた。口頭講演は、全講演が招待講演であり、多岐
にわたる物質・材料の分野を広く取り上げ、レビュー的な内容の講演をお願いし
た。いずれの講演もたいへん有意義であったが、結果的に質疑込みで20分の持
ち時間では多少不足気味であったろうか、議事進行が少し駆け足になってしまっ
た感がある。次の機会には、討論を深めやすくするため、テーマにもう少しアク
セントをつける等の工夫も考慮したい。ポスター発表では、他のセッションとも
共通の会場で、やや手狭で歩いて回るのも困難なほどの大混雑状況のなか、長時
間にわたり大変熱心で活発な議論が行なわれた。日本MRSでの発表は初めての
参加者も多数おり、「これほどの活況であれば、ポスター発表をもう1つ申し込
んでおけばよかった」といった感想も聞かれた。

X線・中性子反射率法およびその関連技術は、従来から表面や薄膜・多層膜の界
面の解析に有用なツールとして広く用いられてきている。本セッションでの討論
では、必ずしもその単純な延長線上にはない、ある意味ではこれまでの常識の枠
外にあるような、思い切った拡張、高度化にむけての期待感が多く語られた。
quick 計測(刻々変化する埋もれた界面の研究)、微小領域分析(場所的に均一
ではない界面の研究)、あるいは、情報の種類と量を増やすことを意図したほか
の測定技術(回折、小角散乱等)との融合、X線と中性子の相補利用等は、特に
重要と考えられ、多くの発表者が異口同音に、その意義を指摘した。先駆的な研
究の試みも始まっており、今後、一層の高度化とともに、多くの興味深い物質・
材料への応用の広がりが期待される。

奨励賞については、今回候補となった9件の中から、矢代航氏(東大新領域)の
「多波回折現象を利用したSiO2/Si界面下のひずみの研究」が選ばれた。